全国の書店員による、おすすめ本のフリーペーパー「晴読雨読」通称"はれどく"の公式ブログです。


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初めての別冊! 私の本屋大賞(PART1)

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                          表紙イラスト【ブックポート203鶴見店(神奈川県)横山聖実】



スペシャル対談 本屋大賞はこうして出来た!

 本の雑誌社の炎の営業マン、杉江由次。日本出版販売株式会社、通称・ニッパンのマーケティング本部、古幡瑞穂。実はこの二人、『本屋大賞』の誕生に深く関わり……と言う以上に、彼らがいなければ『本屋大賞』は生まれなかったと言っても過言ではない、まさに生みの親である。しかも、自身は本屋ではないから投票は出来ない……にも関わらず、十数年間『本屋大賞』を陰でを支え続けてきた育ての親でもある。
 そんな二人が、『晴読雨読』の為に語り下ろした、『本屋大賞』前夜の物語。

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杉江 今日は本屋大賞の裏方二人で本屋大賞が出来るまでの話をしようと。
古幡 ふざけたことを言わないようにしないとね(笑)。
杉江 なにせ飲み会の戯れ言が発端ですから。
古幡 まさかこんな大騒ぎになるなんて考えもしなかった。今や受賞作はミリオンセラーで映像化も当た
   り前……。
杉江 そもそも僕と古幡さんが出会ったのも飲み会ですよね?
古幡 たぶん飯田橋にあった「深夜プラス1」の店長・浅沼さんを囲む飲み会だったと思う。なんかあ
   の頃って、14年くらい前なんだけど、出版業界には不思議な飲み会がいくつもあったんですよね。
杉江 ありましたよね。そこで名刺交換をして、いろんな人と知り合って行く感じで。
古幡 まだTwitterやFacebookもなかったから、そうやって出会っていくしかなかったんです。
杉江 古幡さんは当時日販から楽天に出向していたんですよね?
古幡 楽天ブックスで働いていました。
杉江 ホームページで毎日読書日記を更新していたのが印象に残ってます。こんなに本が好きな人がいる
   んだって。
古幡 毎日読んでは書いていたんですよねえ。

杉江 あの頃は書店員さんたちがお店の枠を越えて横に繋がっていこうとし始めていた時期でしたね。
古幡 色んな所で飲み会をやっていたら今度この人を紹介するよっていうのが増えてきて、ある日、それ
   なら全部一緒にやっちゃえばいいんじゃないかって思ったんです。
杉江 それが本屋大賞の始まりの飲み会の一つですね。とにかくいろんな書店員さんがいた。
古幡 『帰りたくない!』の茶木則雄さんがいたり、元往来堂で『本屋はサイコー!』の安藤哲也さんが
   いたり。
杉江 実は僕、その飲み会に声をかけて貰っていた訳じゃないんですよ。
古幡 そうなの?
杉江 たまたまその日、営業にいった書店さんに教えられて急遽顔を出したという。
古幡 運命ですね(笑)。
杉江 そう、あそこで飲みに行ってなかったら本屋大賞は無かったかもしれない(笑)。
古幡 その飲み会がみんな初めて会うとは思えないほど盛り上がって、みんな本がどうやったら売れるか
   とかどの作品がいいか大騒ぎしていた。ここにいる人たちが本気になったらどれくらい売れるんだ
   ろうって話になって、1,000部くらいは売れるんじゃないかって。
杉江 その程度のレベルの話だったんですよね。

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古幡 本当にね。それでみんなのメールアドレスを集めて、メーリング
   リストを作ったの。そのメーリングリストでしばらく情報交換や
   企画提案してましたね。
杉江 それともう一つの飲み会が三省堂書店の内田さんと本の雑誌社のホームページのスタッフが集まっ
    た飲み会なんです。それはホームページの連載の打ち合わせだったんですけど、ちょうど横山秀
   夫さんの『半落ち』
が直木賞を落ちたときで、もうお仕着せの賞じゃなくて自分たちでやった方が
   いいんじゃないかって、酔って大騒ぎしていたらシステム担当者がネットを使えば出来るよと具体
   的な話をしだした。
古幡 それで実際に何が出来るんだろうということで集まったのが、本屋大賞実行委員会の元になった集
   まりですね。
杉江 そう言えば正式に集まる前に僕と古幡さんで博報堂に行きましたよね。博報堂は「本の雑誌」のホ
   ームページを運営している会社で、その担当者が無類の本好き。一緒になって何かしようって盛り
   上がっていた。
古幡 あの時の思い出といえば田町で道に迷って杉江さんが走って来たことくらいしか記憶に無いんです
   よ(笑)。
杉江 博報堂のエレベーターに乗った時に「プロジェクトXだったらこのシーンは出るよね」って言い合
   ってましたね(笑)。
古幡 言ってた(笑)。
杉江 博報堂に行った時はまだ書店員さんはいなくて、なんかやりたいけどどうしたらいいんだろうって
   いうのを裏方だけで話し合った。それで僕たちは出しゃばらず、書店員さんたちが必要なものを作
   るバックアップをしようって。それでその手の話に興味がありそうな書店員さんたちに声をかけて
   最初の会議を開いた。
古幡 2003年の5月くらいかなあ。
杉江 それから毎月集まって、三、四カ月かけて何をするか決めていったんですよね。
古幡 毎回会議がすごい盛り上がったし、熱かったよね。
杉江 熱かった。一冊選ぶのは嫌だとか、12月にやろうとか。
古幡 点数制についてもすごい議論した。
杉江 二次投票制もそうだし、その二次投票で何冊読むかとか。
古幡 本屋大賞って名前を決めるのもけっこう揉めたんですよね。
杉江 「さん」をつけるのかどうか最後まで話し合った。「本屋さん大賞」。でも自分たちが本屋なのに敬
   称をつけるのはおかしいということで取ったんです。
古幡 でも本屋大賞だと本屋を表彰する賞にならないかとか。他の候補に何があったか全然憶えてないん
   だけど。
杉江 横文字にするのはやめようって言ってた気がする。
古幡 それで最終的に「全国書店員が選んだいちばん!売りたい本 本屋大賞」に決まった。その時、会
   議室にあったホワイトボードに誰かが書き出したんですよね。それをみんなで写真撮ったのは覚え
   ている。
杉江 そうそう、みんな携帯を取り出して写真を撮った!
古幡 あの写真、それから見たことないけどね(笑)。

杉江 あのとき実際、古幡さんはどう思っていたんですか?
古幡 若かったですからねえ。28歳くらいなんですよ。
杉江 僕も30歳。
古幡 本がどんどん売れなくなっていて、なんかやらなきゃって考えていたと思います。
杉江 2003年の出版売上って2兆2278億円で、2014年の1兆6,000億円に比べたらずっといいんだけ
   ど、何年も落ち続けていたのでとにかくもうヤバイみたいな危機感がありましたよね。だって僕、
   坂本龍馬になるって言ったもん。
古幡 言ってた(笑)。ただ、マイナスのものをどうしようかっていう感じではなくて、とにかく僕たちは
   売るのが楽しいみたいなものが発端としてあった。この気持ちをもっと形にしようみたいな。

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杉江 実行委員は伊坂幸太郎さんにあげる気満々でしたよね(笑)。ちょうど『重力ピエロ』が出た頃で、
   こういう若くて才能のある作家を押し出す賞を作らないといけないって。
古幡 『陽気なギャングが地球を回す』も出た年で。私も絶対伊坂さんって思ってた(笑)。
杉江 それと直木賞の『半落ち』問題で、横山秀夫さんに獲らせたいという思いが交錯していた。ところ
   が蓋を開けてみたら小川洋子さんの『博士の愛した数式』が第一回の受賞作に。
古幡 『博士の愛した数式』が受賞したことが、本屋大賞にとってものすごく良かった。
杉江 本屋大賞のカラーはあれで決まりましたね。『博士の愛した数式』が獲っていなかったら、こんなこ
   とにはなっていないと思う。
古幡 毛色が違っていたよね。
杉江 『博士の愛した数式』が受賞したことで、文学とエンターテインメントの境界線上にあるような本
   が選ばれるようになり、後に様々なジャンルを飲み込んでいった。
古幡 あとは『博士の愛した数式』の受賞によってすごく透明色が出た。小川さんにみんな心洗われたも
   んね。私たちもこの賞を作って良かったって。
杉江 一回目で横山秀夫さんが獲っていたら、打倒! 直木賞って側面がもっと鮮明になっていたかもし
   れない。
古幡 理事長も発表会の挨拶で言っていたし(笑)。どこかで対抗色を薄めたんだよね、なんとなく。
杉江 打倒しちゃ文芸書の売上が減っちゃうと気づいた(笑)。共存共栄の方向に転換したんです。
古幡 やっぱりすべてにおいて一年目がいちばん大変だったね。
杉江 一年目の発表のときは日販には戻っていたんでしたっけ?
古幡 戻ってた。
杉江 ゴールデンウィーク前とか大変じゃありませんでしたか? 『博士の愛した数式』がないぞ!!!
   って。
古幡 もう毎回言われてるからどこで言われたのか分かんない(笑)。
杉江 発表してすぐはまだ今ほど爆発的じゃなかったんだけど、しばらくしてテレビで採り上げられたり
   して一気に売れちゃって重版が全く間に合わない。
古幡 今ほど出版社も重版してなかったしね。新潮社もどれくらい刷っていいのか真剣に悩んでいた。
杉江 海の物とも山の物ともわからない新参の賞ですから。
古幡 よくやってくれたと思う。だって発表会当日になってもどういう発表会になるか想像もつかない会
   だったじゃないですか。
杉江 難しかったと思います。書店さんだって投票したお店はフェアコーナーを作っていましたけど、投
   票してない人は別に気にもとめてなかった。新潮社からなんか変な帯がついたのが入って来たくら
   いの認識だったんじゃないですかね。
古幡 最初なんて投票人数百九十人くらいですから。やっぱりメディアの力がすごかったよね。
杉江 新聞や雑誌も熱を入れて紹介してくれたし、NHKと王様のブランチが紹介してくれたのが大きか
   った。
古幡 そういう方面の人と出版業界がちゃんと手を組んだのが初めてだったんですよ、きっと。
杉江 芥川賞や直木賞のネット中継も今みたいにしてませんでしたからね。

古幡 本屋大賞の画期的だったところは、発表後に時間が経って本が並ぶんじゃなくて、事前に準備をし
   ておいて当日には本屋さんに受賞作がドーンと並んだことだと思います。あれはやっぱり売り場の
   人たちが作った賞ならではの発想だった。
杉江 発表日には絶対本があるようにしてくれっていうのは実行委員の書店員さんが最もこだわり、苦心
   したところですよね。確かにその仕組を一回目で作れたのは大きかった。

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古幡 一回目を迎えるまでにとにかく色んなことを話し合って、これ以上ないという仕組みを考えたのが
   成功の秘訣だったんでしょうね。
杉江 そのおかげで12回も続いている訳で……。まあ、よく続いてますよね(笑)。
古幡 本当にね。会議ではケンカもするしね。わりとガチで。
杉江 お互い感覚が違うから議論が激しくなることもある。
古幡 立場も違うしね。
杉江 しかも実行委員のメンバーってみんな癖がある人じゃないですか(笑)。
古幡 考えてみれば選りによってよく集めたねってメンバーだもんね(笑)。
杉江 それがみんな思ったことを言い合う訳ですから大変です。会議としては正しい会議なんですけど。
古幡 全員やり方が違うけど目的地だけは一緒。実行委員が同じ乗り物に乗ったことは一回も無いかもし
   れない(笑)。
杉江 ああ、なるほど。それはそうかもしれない。自転車で行く人もいれば、車の人もいる。
古幡 山手線で隣の駅なのに逆回りする人とかね。
杉江 でもゴールが一緒だから我慢出来てるのか。
古幡 元々みんなが集まった時に会社で本の話ってしてる? って話題になったんですよ。実は本を読ん
   でもその話を出来る相手が意外と少なかった。だからみんなで本の話をどんどんしようって。
杉江 それって古幡さんと僕が初めてあった深夜プラス1の浅沼さんの名言と一緒ですよね。「面白い本は
   独り占めしちゃいけない」。
古幡 そうそう。面白い本はこっそり読まないで、みんなで共有しようって。
杉江 それが本屋大賞の核なんですよね。
古幡 そう、原点はそれ。これからずっとね。



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 遺言、と言うとひどく大げさに聞こえてしまうが、私が死んだ時にしてほしいことがひとつだけある。
 もしも 私が死んだら、私の死を悼む時はどうか時計の針を午前10時30分で止めてほしい。
親でも旦那でもなく、従姉にだけ伝えておいた私のこのささやかな遺言を公言しようと思えたのは、今年の本屋大賞の二次投票で辻村深月さんの『ハケンアニメ!』(マガジンハウス)を読んだからだ。
 それまで私は二次投票で吉田修一『怒り』(中央公論新社)を一位にするつもりだった。気合の入ったコメントも書いた。けれど、最後に読んだ『ハケンアニメ!』にひっくり返された。

『ハケンアニメ!』はアニメーションをガチで愛する大人達のお仕事小説だ。
 今の日本で、アニメはもはや子供たちだけのものではなくなっていることは周知の事実だが、そのアニメを作っているのはいい歳をした大人たちなのだという、当たり前の事実に愕然とした。
 アニメは、いや世の中のありとあらゆるカワイイは(カッコイイもだけれど)大人達の手で生み出されているのだ。
 そう。10時半というのは小学生の私がその30分だけを心の支えにしていたアニメの放送時間なのだ。
 人生の転機となるきっかけは一枚のCDだったり、一本の映画だったり、人それぞれだろう。それが私にとってはたまたまアニメだった。週に一度心の逃げ場所が出来、イベントに参加するようになって外に知り合いがたくさん出来た。劣悪な子供時代を過ごしていた私に家でも学校でもない私の居場所を作ってくれた。
 ちなみに私の金銭授受と接客の基礎はコミケで培われたと思っている。
 今でこそ恥ずかしくなくなったがオタクと呼ばれる後ろめたさをこの『ハケンアニメ!』が一蹴してくれた。オタク上等! アニメが好きで何が悪い!

 投票コメントにはさすがに織り込めなかった遺言をこの場をお借りして書かせていただきます。。。
『ハケンアニメ!』を読み終え、ずっと迷っていたそのアニメのメモリアルDVDBOXを買う決心がやっとついた。分割払いでだけど……。
 たけーよ! 日本のアニメ!                  【成田本店 みなと高台店(青森県)櫻井美怜】



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 小手鞠るい『アップルソング』(ポプラ社)
読み始めた瞬間、私は終戦の焼け野原の瓦礫の中に立ちすくんでいた。読了してからも、報道写真家・茉莉江は、血の通った実在の人物として、私と同じ時代の中に生きていたと感じ、疑いさえしなかった。浅間山荘事件のVTRのどこかに彼女の姿が探せるはずだと、ウィキペディアで探せなかったにも関わらず。2014年に読んだ中で、もっと多くの方に手にとっていただきたかった本。

 安藤祐介『おい!山田』(講談社)
全方向へ大声で『おい!山田』を読め! と叫びたい。いや、叫ぶ!! 組織の部署のしがらみとか、そんなもんぜーーんぶ取っ払って、目指す方向は一緒なんだから、力を合わせようぜ! って。この本を読んだら、組織の中で働くって実は楽しいんじゃない? って気持ちが強くなる。会社の中で、自分の進む道に迷った貴方に、この本を捧げます。

 柚木麻子『本屋さんのダイアナ』(新潮社)
この本は大賞にノミネートされてから読んだ本の中でもとびきりキラキラして、可愛くて優しいどんな方にもオススメの本です。「大穴」と書いて「ダイアナ」と名付けられた主人公。派手なキャバ嬢の母・ティアラの全くブレない信念のもと、悩み、反発しながら時を経て、すれ違いから一度仲違いしてしまった親友と共に大人へと成長する物語。ダイアナと言う名前に隠された真実と、母ティアラのついた嘘に切なくなったり、ダイアナと彩子がお互いに憧れているのに、その事実を知らないもどかしさも、可愛らしくてときめきます。
                                         【黒木書店 白水店(福岡県)原田みわ】



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私の一次投票はこちら。
1位 『笹の舟で海をわたる』角田光代(毎日新聞出版)
2位 『絶叫』葉真中顕(光文社)
3位 『四月一日亭ものがたり』加藤元(ポプラ文庫)

 例年少なくとも一作品はノミネートされていましたが、今年はとうとう一つもノミネート作に残りませんでした。
 そしてノミネート十作品が発表されてから二次投票の読書が始まったわけですが、今回はごめんなさい。途中で挫折(リタイア)してしまいました。
 全作品を読んでコメントを書かなければならないルールなのに、コメントが書けない作品にぶち当たってしまったからです。
 批判的に聞こえるかも知れませんが、決して本屋大賞を否定しているものではないことをご理解ください。こういう参加者もいるということで。

 私もそうですが、『本の雑誌増刊「本屋大賞」』で全作品のコメントを読むのが毎年の楽しみという読者はたくさんいらっしゃいます。
 そして、いつかは行きたい発表会。参加書店員の特権ですからね。それも、一次投票から1位で推す作品が受賞作だったら最高かな。                   【明林堂書店 大分本店(大分県)前畑文隆】



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 自分は子どもの頃からマイノリティとして生きてきた。授業中、教科書に挟んで文庫本を貪り読んでいたのは私だけだったし、学生時代に好きなバンドはCRY《 mu 》( 誰も知らないインディーズバンド・しかもいちばん人気のないシンセギターの人のファン )だったし、サーティーワンでアルバイトしていた時は、従業員でも「うぇー」っと言うほどクセのある、蛍光ピンク色でどぎつい薔薇味の「ターキッシュディライト」が大好きだった。

 ちなみにバンドはメジャーデビューできないまま解散したし、季節のおすすめとして登場したターキッシュディライトは、その後二度と店頭に並ぶことはなかった。いつだって大好きなものは他人に理解されない。いつからか、大好きなものを誰かと共有することを諦めていた。ひとりでライブに行き、ひとりでアイスを食べ、私が読書好きであることは誰も知らない。

 しかし本屋でアルバイトを始めると、私がマイナーだと思っていたお気に入り作家を、自分も好きだと言う人たちに、たくさん出会うことができた。私が愛するものは、誰が何と言おうと愛しい。世界中から批判されても、揺るがない。でも、それを愛する人が私だけではないと知った時の心強さたるや! 安堵と喜びと興奮たるや!! 私は寂しかったのだ。寂しくなくなって初めて気付くほどに、ずっと寂しかった。

 本屋大賞の投票は、そんな私にマジョリティの喜びを与えてくれる。何しろ、自分が一次投票から一番面白いと思っていた小説が、もう二度も、大賞を受賞しているのだ。おまけに、毎年ノミネート作品が発表されると、八割以上が既に読んでいて、面白いと思ったものだった。2015年にいたっては、十作品全てを読んでいた。なんというマジョリティな読書傾向。もはや私のことは、歩く本屋大賞と呼んでくれてよい。
                                     【三省堂書店 有楽町店(東京都)新井見枝香】



PART2に続く⇒
by haredoku | 2015-04-07 19:41 | 『はれどく 別冊』私の本屋大賞