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カテゴリ:『はれどく vol.9』( 2 )

『はれどく vol.9』 前編

表紙
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連載 有楽町の食いしん坊・新井見枝香の
〝 読んでから食う? 食ってから読む? 〟
【三省堂書店 有楽町店(東京都)新井見枝香】

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 みなさん、サラバ! 西加奈子さん、サラバ! 直木賞受賞おめでとう! そしてありがとう、サラバ! 危うくお店からサラバ! されるところでした。 サラバ! が受賞することを1ミリも疑っていなかった私は、直木賞発表の瞬間を、ただ店の中央にドンと阿呆のように、サラバ! だけを積んで待っていました。常連のお客様には、サラバ! が直木賞に間違いないから、今のうちに買っておいたほうがいいとアドヴァイスをし、取材に来たテレビカメラに向かって、サラバ!が受賞します! と大予言もかましました(台本完全無視)。受賞の瞬間泣き崩れた私の肩をポンと叩いた、ややどす黒い店長の顔色を、私は一生忘れてはいけないと思います。

 ところで私は、一日に最低二回は自分のことが嫌いで嫌いでどうしようもなくなるのですが、その時には必ず、サラバ! を思い出します。《僕は自分が嫌いだった。大嫌いだった。》よりによってそこ! しかもトイレの個室で諳んじては泣く……闇すぎる。私は世界でいちばん自分のことが大好きな人間だと思われがちですが、なんとびっくり! 自分のことが大大大嫌いなのです! あらギャップ萌え? そう、人は見かけによらない。人間って深いな。

 ということで、ギャップ萌え小説をひとつ、ご紹介します。柴崎竜人さんの『あなたの明かりが消えること』。柴崎さんは、日本人女性の九割がイケメンと答える美しい容姿であり、日本人男性の半数以上がイケスカナイと答えるだろう、超エリートな経歴の持主です。イケメン好きで有名な私が彼の作品をパワープッシュすることを、胡散臭く思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そこはプロの書店員、舐めてもらっては困ります。渋い。驚いたことに、とても渋い、大人の物語でした。彼の中には、爺さんが住んでいるのでしょうか。高級旅館の日本庭園に、静かに佇む一本の赤松。そしてその赤松を眺める孤独な仲居と、常連客である男性画家の、もどかしいほどにプラトニックな関係。 なんと美しい……。作家のイメージと小説の激しいギャップに萌えて、私はコロリとやられてしまったのであります。あらすじは語りません。ただ、人間は深い。そこを臆せずに書こうとする小説家を、私は信じています。



『はれどくvol.9』 目次
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乙女の恋は秘密の味。秘密の味は蜜の味。
【成田本店 みなと高台店(青森県)櫻井美怜】

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 子供の頃に読んだおまじないの本に、好きな人への手紙の最後に×××をつけるとその思いが成就する、というようなことが書いてあって十代の私はいそいそと手紙の末尾に×をしたためていた。素直だったなぁ、昔の私。その記憶があるせいか、大人になった今でも×という記号はバツでもエックスでもなく少女時代の小さな秘密の暗号になっている。

 そこへきて『あなたに贈る×』(近藤史恵)である。バツで伏せられている部分は「キス」と読ませるそうで物語はキスでのみ感染する致死力の高い病が蔓延する世界。かつては愛情表現だったキスは国際的に禁じられている。純潔を尊ぶ閉鎖的な学園で起こる一人の美少女の死。外も内側も閉じている閉塞された世界観は、まさに青春時代に学校や世間に感じていた不自由さそのもの。少年たちのまっさらな思いと少女たちの透き通った恋心。幼いゆえに儚く、そして儚いがゆえに途方もなく強いその秘密の恋の結末はどうぞ、本書で。

 この物語に隠された秘密を知らないまま読めたのは奇跡的な幸福であったと思わず本の神様に感謝したのが『陽だまりの彼女』(越谷オサム)。まだ映画も原作にも触れていないというそこのあなた! おめでとうございます! 白い気持ちでこの作品を読める喜びたるや神の祝福ですよ! 泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、みんなビーチボーイズを聞きたくなればいいっ。

 中脇初枝さんが描く恋の物語『みなそこ』は大人の恋の物語。大人の恋とは、禁断の恋。帰省して会うたびに皮を剥いでゆくように子供から男へと羽化してゆく故郷の親友の息子。いけません。その恋は許されません。恋は落ちるものですが、禁断の恋は堕ちるもの。足元にぱっくりと空いた穴が深ければ深いほど、落ちている間の快感が増すなんとも因果な仕様になっております。

 秘密、といえば小学生の私を本の虫にしたきっかけの安房直子さんの『うさぎ屋のひみつ』は外せません。アクセサリーひとつでとびきり美味しい料理を配達してくれるうさぎ屋。人生には知らない方が幸せなことってありますよね。奥さんが見たうさぎ屋の秘密とは一体なんだったのでしょうか。「ふんふんふん。ひみつ、ひみつ、うさぎ屋のひみつ」なのです。



【「『秘密』の秘密」の秘密】の秘密
【啓文社 ゆめタウン呉店(広島県)三島政幸】

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 どうも。年末に呉に転勤しました。今号より、呉からお送りいたします。

 さて、「秘密」というテーマで誰もが連想するのは、東野圭吾の代表作のひとつであり、ブレイク作でもある『秘密』(文春文庫)でしょう。タイトルそのまんまですしね。信じられない方も多かろうと思いますが、東野さんはかつて「売れない作家」だったんですよ。ブレイクのきっかけはこのちょっと前の『名探偵の掟』(講談社文庫)が「このミス」三位になったことですが、本格的にブレイクしたのは間違いなく『秘密』でして、週刊文春ベストミステリーで三位に入り、その年の日本推理作家協会賞を受賞、そして東野さんにとって初の直木賞候補にもなり、ついには広末涼子、小林薫主演で映画化されました。近年でも志田未来主演でドラマ化されるわ、ハリウッドでリメイクされるなど、大きな反響を巻き起こした作品であります。

 で、実はこの『秘密』の発表当時、一部のミステリマニアの間でちょっとした論争があったのですよ。今は無くなりましたが、創元推理倶楽部の東京分科会が運営していた「謎宮会」というホームページ(ネット黎明期に生まれた、最初期のミステリ系サイトのひとつ)で、この作品の結末に関して激論が戦わされました。結末なのでネタバレになりそうですが、やや曖昧に書くと、「結局のところ、最後に残ったのは、どっち?」というもの。いや、どちらかは伏線等で明かされているのですが、それは××が父(または夫)を想って、自分が××であるように「わざと演じていた」のではないか――という推理が「『秘密』の秘密」というタイトルの記事で寄せられ、それへの反論も【「『秘密』の秘密」の秘密】という記事で紹介されたりと、非常に面白い展開を見せました。

 小説上の結論めいたものはありますが、そう言われれば、はて真相はどうなんだろう、という気持ちになってきませんか? 同じ思いの人もおられるようで、結末に関しては「YAHOO! 知恵袋」でも様々な意見が交わされています。私は……いや、やっぱりネタバレになるから止めておきます。これこそ読んだ人がそれぞれ心に留めておくべき「秘密」なのかも知れませんね。



あれもこれも「秘密」の本 その一
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『うせもの宿』穂積 小学館フラワーコミックスαフラワーズ 9784091364166 ¥429+税

『式の前日』 『さよならソルシエ』(共に小学館フラワーコミックスαフラワーズ)の著者が描き出す、古き佇まいの旅館で繰り広げらる物語。不思議が満ち溢れた宿では、案内された客の探しものが必ず見つかると。それぞれが秘めたる失せものは何か。気になる話です。
【七五書店(愛知県)森晴子】


『ユニヴァーサル野球協会』ロバート・クーヴァー/越川芳明 訳
(白水Uブックス)9784560071892 ¥1,600+税


今から五十年近く前に、紙と鉛筆とサイコロで自分だけの妄想野球リーグを運営した男。自分だけの秘密の世界に他人を招いたばかりにヒドい目にあうとか五十年近く前に書かれたとは思えないリアリティ。野球に限らずすべてのオタク必読の書。
【紀伊國屋書店 京都営業部(京都府)川村学】


『ラブラブエイリアン』岡村星 日本文芸社ニチブンコミックス 9784537130997 ¥590+税

女性だけのアパートに墜落したのは地球を二十分もあれば滅ぼせる高度な科学文明を持つエイリアン。そんな事はお構いなしに進む赤裸々な女子の会話がメインの小ネタ満載漫画。エイリアン達の事はNASAには秘密でお願いします。
【サクラ書店 ラスカ平塚店(神奈川県)栁下博幸】


『水の生きもの』ランバロス・ジャー/市川恵里 訳 河出書房新社 9784309274034 ¥3,800+税

まさしく箱入り娘(息子)! インド・チェンナイの工房で作られたハンドメイド絵本です。手漉き紙・手刷りの初版三,〇〇〇部。自分だけの秘密の番号を持ってみませんか? 一生モノの一冊は大人のあなたへ。その美しさに目を見張ります。
【ころころむし】



私が秘密にしておきたい本
(きー@ツィッター @keyblackcoffee)

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〝 秘密 〟 とは、甘美なようで頑固、屈強ながら脆さを併せ持つテーマですね……おそらく、他の執筆陣は 〝 秘密 〟 をテーマにした内容の本を選び、皆様に紹介するのでは? と気付いた私は校了直前になって慌てました。うちの本棚に、そんな危うい書籍は無いよ!(割と小説の登場人物になりきるタイプの人間です。苦笑) そんな訳で……皆さまには、私が秘密にしておきたい本の紹介をしよう。本当は秘密にしておきたいけれど!! はい、前置きが長くなりました。普段ツイッターで短文連発しているので嬉しくなってしまいまして申し訳なし。私が紹介したい書籍は、こんな御時世だからこその一発です。『新月のソウルメイキング』仰々しい題名ですね。2003年に刊行され、題名にときめいて購入。ズボラな私が十年以上、習慣化している新月の日のアファメーション。アファメーションとは、短く前向きな言葉を繰り返し使うことで自己暗示をかけ、願望の実現に近付く手段の一つです。内容を簡単に説明しますと

 1、新月に突入する時間から、理想は8時間以内、難しい場合は48時間以内に……
 2、最低、二つから九つの願い事を白い紙に書いて……
 3、自分の署名、願い事を書いた日付を最後に記します。

これを私は毎月ぼちぼち書き残しているのですよ。月が通過する星座の道標を頼りに。書籍によれば、書いた紙は仕舞っても、捨ておいても良し。たまに読み返すのが楽しいので、私は気に入った箱に仕舞っております。ちなみに、春分に訪れる新月の時には特別メニューも。詳細は、是非とも本書を手に取っていただきたいので、秘密です(笑)。去年の新月には、こんな気持ちで願い事したんだな……。とか、書いたこと忘れてたけど、この願い事、いつの間にか叶ってるわ! ラッキー☆ とか、なかなか愉快な習慣になってます。もっぱら軽い気持ちで毎月の新月の日を楽しみにしながら前向きに……。自分の言葉、心と向き合うことって、普段しないですよね。仕事で疲れてたり、趣味に没頭していたり。この本を片手に今年は月に一日、五分程度でも自分と向き合う時間を作ってみませんか? 案外、自分でも気付かないような心の中にある秘密の扉の鍵が開くかもしれませんよ。それでは、今後も皆様の読書生活に良い風が吹き抜けますように。



全ては薔薇の下に
【紀伊國屋書店 名古屋空港店(愛知県)山崎蓮代】

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 いらっしゃいませ。いつものブレンドになさいますか。え、本にまつわる話で相談、と。さあ、私がお役に立てますかどうか。

 まずはこれですね。『みなそこ』中脇初枝。夏毎に帰る実家。いつもと変わらぬ人々や風景が何故か今年はざわつきを感じる。夫や娘を愛する気持ちとは別に抱いてしまったその感情とは……か。土地に留まる人や慣習だけではない目に見えぬチカラと、自然描写が美しい作品です。

 次は『つちくれさん』仁木英之。考古学好きな元刑事が出会った不可思議な人物「つちくれさん」と古墳で発見された古代の衣装を纏った死体の謎を解く物語なのですね。殺人事件もさることながら、このつちくれさん自身にも何やら謎が隠されているようです、気になるポイントでしょうか。助手の明子さんがいい味を出してます。考古学と刑事さん、どちらも生きていた人達について探求する点ではなるほどイコールかも。

 おや。飲み物が冷めてしまいました。おかわりはいかがです?

 こちらは、『北天の馬たち』貫井徳郎、探偵モノ。喫茶店「ペガサス」二階に事務所を構える皆藤と山南。臨時の助手として仕事を手伝う毅志が関わった二つの依頼・逮捕劇。毅志は不穏な予兆を感じる。美味しい珈琲を出す喫茶店と聞くとつい反応してしまいます、いけませんね。この探偵さんたち、もしかすると……。いえ、何でもありません。続けましょうか。

 最後は……『優しい死神の飼い方』知念実希人。主人公はゴールデンリトリバーのレオ(仮名)、看護師菜穂に拾われ向かった先の病院に入院している患者たちにある共通点を見つける。曰くつきな病院と患者たちの過去にレオは特殊なチカラで謎を解いていく。あぁ、この作品を読むとシュークリームが無性に食べたくなりますよ。

 さて。ここに集められた本にも共通点があることに気付きました。あなたはどんな 〝 秘密 〟 を打ち明けにいらしたのでしょう? いえ、その前に。話し続けて私も喉が渇きました。ご一緒にハーブティーはいかがです? とっておきの薔薇のお茶をご用意しましょうね、全ては薔薇の下に。



世界最大のバイオ企業の悪夢
【進駸堂 中久喜本店(栃木県)鈴木毅】

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 『モンサント 世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業』
マリー=モニク・ロバン/著 村澤真保呂・上尾真路/訳 戸田清/監修 作品社


 本書を紹介するにあたり、まず先にお断りをしなければならない。
 実はまだ読了していない。今回取り上げる本は別の本だった。しかし、先日刊行されたばかりの本書を読み始めたところ、あまりの衝撃に今回のテーマ「秘密」で紹介しなければならないと思ったのである。
 原稿締め切り当日まで原稿を書かなかった理由は出来るだけ読み進めようと思ったからなのだ。
いや、本当ですって。

 さて、本書は世界最大のバイオ化学企業『モンサント』の恐るべき実態を、多くの関係者へのインタビューと関係書類などから明らかにした大著である。

 まず『モンサント』が何をしたのかを簡単に説明すると、工業薬品のPCB(ポリ塩化ビフェニル)を製造していたアメリカ南部の街の工場で、汚染廃棄物を街中に廃棄、水路や川へも排水していた。周囲の住民はガンや流産なども含め健康被害が増大した。

 アメリカ軍がベトナム戦争の枯れ葉作戦で使用したダイオキシン(オレンジ剤)を開発し、多くのベトナム人や、兵士、またその子孫までもが先天性の奇形、障害に苦しむことになった。

「環境に優しい」と謳った除草剤が実は人体に有毒であったこと。そしてそれを隠蔽していたこと。

 牛成長ホルモンという遺伝子組み換え薬品を開発。乳牛に注射することで15%の牛乳の増産が可能になるが、乳房炎になる牛が多発。その牛に抗生物質が打たれることで、その牛から採られた牛乳には残留物として抗生物質が入り込み人体に悪影響が出る……。

 などなど、実はこれでも本書の半分なのだ。

 この悪夢のような行為について、真に恐ろしいのは、消費者へ人体に害があることを知らせず、害があることを知っていながら知らないとウソをつき、逆に「人体には影響が無い」と宣伝し、御用学者にでたらめなデータで安全性に信憑性を持たせる論文を書かせる。また国の規制機関に会社のOBを送り込み、規制の緩和や、自社に有利な規制を設けさせたりと国家機関との共謀とも取れる関係を築いていることである。
 先の牛成長ホルモンの例ではFDA(アメリカ食品医薬局)から、牛成長ホルモン使用によって生産された牛乳に対してラベル表示をする義務は無いとの指令が出る。理由は天然の牛乳と同等であるからという理由で。供給者は「牛成長ホルモン不使用」という表示をする権利も無い!。
 こうして牛成長ホルモン使用の牛乳と、不使用の天然牛乳が同一の牛乳として市場で流通されているのだ。消費者にはこの企業の製品を「買わない」という選択肢すら無いのである。そしてこの通達を書いたのは後日モンサント副社長となる人物であった。

「ビジネスでは、たとえ1ドルであっても損失することは許されない」

本書冒頭に引用されているモンサントの書類の一文がとても恐ろしい。科学者の良心と資本主義の良心は決して交わることがなく、現代社会は後者を理由に前者を蔑ろにしてきたことに気付き愕然とします。



⇒ 後編に続く
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by haredoku | 2015-04-01 17:19 | 『はれどく vol.9』 | Comments(0)

『はれどく vol.9』 後編

⇒ 前編から続く



連載 アヒル書店員の無駄話ですガァ
【bibduck】

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 ガァ!はいどーもアヒルです。

 秘密の趣味って持ってますか? 僕の知り合いの書店員はですね、やたらマニアックな人が多いんですよ。今回はそんな書店員のかわった趣味を紹介してみましょう。

 本を集めるというのはよくある趣味ですが、そのうち本を積み上げるのが趣味なのか? という状態になります。さらに悪化すると、どこに何があるかわからなくなってしまい、同じ本を何度も買うのが趣味、という末期を迎えます。迷子になるのが趣味というめずらしくやっかいな書店員もいます。アイドルが趣味の書店員もいますね。あと特殊な例では、自宅では全裸で過ごすという、一つ間違えば逮捕という趣味を持っていて、書店員のイメージダウンに繋がりかねないとても迷惑な人もいます。一緒にされたくないですね。またある人は、変な書店員を集めてめちゃめちゃ手間のかかるフリーペーパーを作っています。販促の手段の一つではありますが、こんな面倒なことを嬉々としてやり続けるのはもはや趣味だからとしか思えません。ええ、素晴らしいです、そんけーしてます!

 さて、ここで僕の秘密の趣味の中から、いくつか公開できるものを紹介しましょう。

 僕は学生時代に綾辻行人さんの『十角館の殺人』(講談社文庫)を読んで非常に衝撃を受けたんですね。それで新本格ミステリを読むのが趣味になった、、、という話ではなく、この小説の中に気になる箇所があったんです。それは、探偵役の鹿谷門実の趣味である「折り紙」です。「首が3つある折鶴」「七本指の悪魔」などを正方形一枚の折り紙からハサミものりも使わずに作り出す。なんだそれは? と思って調べると、前川淳の『ビバ! おりがみ』(サンリオ)という真っ赤な悪魔の写真が表紙の本にたどり着きました。しかしこの本すでに絶版で、どうすれば手に入るのかわからず古本屋さんを探したりしていました。ようやく県立の一番大きな図書館にあることがわかり大喜びで借りに行ったのを覚えています。代表作である「悪魔」は本を見ながらでも難しく、苦労して折り上げた時には凄い感動を味わいました。ちなみに前川淳の「悪魔」は、日貿出版社の『本格折り紙――入門から上級まで』に載っています。数年ぶりに折ってみたのですが、以前よりも折図が進化していて、すごく折りやすくなっています。この本は今でも流通していますので、挑戦してみたい方はぜひどうぞ。

 さて、次に今もっとも熱い趣味を紹介しましょう。
「けん玉」です。世界で大ブームのけん玉は実は広島県の廿日市が発祥の地なんです。昨年は廿日市でけん玉ワールドカップが開催されて大変な盛り上がりでした。今年も夏に開催されます。今のけん玉の技は進化していてすごくかっこいいんですよ。ということで出版業界も空前のけん玉本ブーム! になって、、、いない、、、あれ? 
出版社の皆さん、けん玉の本出すのなら今ですよ! 絶対いけます!
 今出ている本でお勧めなのは『けん玉の技百選』(ポプラ社)『けん玉の技123』(幻冬舎エデュケーション)ですかね。あと幻冬舎から出ている、光るけんだま「SUPERけん玉」は普通に書店で扱える商品なので書店員の皆さんいかがですか?

 というわけで何が言いたかったかというと、出版社さんけん玉の本を出してくださいよ!! ってことです。それだけです!
 写真をたくさん使った雑誌サイズのムック本がいいかな。もちろんDVDも付けてくださいね。
はい! 今回はどうしてもこれを言いたかったんです! ガァ!



あれもこれも「秘密」の本 その二
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『パンダ銭湯』tupera tupera 絵本館 9784871100861 ¥1,300+税

この絵本、初めて読んだ時は「えっ……!?」黒いパンツ!? 耳は黒く染めてる!? そして、黒いサングラス……。目が怖いかもしれない。普段は愛らしいパンダの秘密が……。明日からパンダの見方が変わるはずです。
【未来屋書店 清水店(静岡県)前本浩美】


『象工場のハッピーエンド』村上春樹 安西水丸 新潮文庫 9784101001319 ¥590+税

十三編からなる短編集で、最も印象的な作品が「スパゲティー工場の秘密」。キーワードは羊男と双子の女の子。昨年故人となられた安西水丸さんの味わい深いイラストも素敵です。
【明林堂書店 大分本店(大分県)前畑文隆】


『ナオミとカナコ』奥田英朗 幻冬舎 9784344026728 ¥1,700+税

ハラハラしながら、胃をぎゅんぎゅんと縮めながら、共犯として「秘密」を守るため読み続けた後の疲労感たるや! あぁ面白かった。自分の中の「正義」を疑ってしまう一冊。タイトルと装丁に騙されるな。
【精文館書店 中島新町店(愛知県)久田かおり】


『幽麗塔』(全9巻)乃木坂太郎 小学館ビッグコミックスペリオール 9784091841803(1巻) ¥524+税

「幽霊塔」で起こる恐ろしい連続殺人事件。謎の男装の麗人テツオに導かれ、巻き込まれていくヘタレな主人公天野。財宝はどこに? 連続殺人鬼「死番虫」は一体誰? 全ての秘密が明かされる時、純粋な狂気がそこにあった。
【福岡の本屋勤務中(福岡県)原田みわ】



秘密――語ること語られることを拒むもの
【紀伊國屋書店 グランフロント大阪店(大阪府)星真一】

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 秘密について語ることはむずかしい。言うまでもなく、語ってはいけないからこそ秘密なので、(例外として「公然の秘密」のようなごっこ遊びはあるにせよ)語ること語られることを拒んで、凝然とそこにあるのが秘密なのだ。「墓場まで持っていく」というレトリックもあるけれど、秘密という言葉はそういう生涯消えない傷や足枷を連想させるし、だとすれば、それについて語ることは墓場泥棒にも似るだろう。漱石の『こころ』の終盤の、昔は国語の教科書にも載っていた有名な場面で、〈もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横たわる全生涯を物凄く照らしました〉と告白せざるをえなかった「先生」の絶望、これこそが秘密に関わる者の唯一の作法なのだ。

 ちかごろ読んだ小説では、直木賞の候補にもなった木下昌輝『宇喜多の捨て嫁』の宇喜多直家が、未来永劫けっして癒やされない秘密を背負ってしまった人物として壮絶に描かれる。体に刻みこまれた古傷が腫物に変わり、そこから血と膿が大量に滲みでる「尻はす」という奇病を患う直家が犯した罪、それは自身に向けられた殺意に反応して、親や子でさえも躊躇なく斬り殺してしまう「無想の抜刀術」という呪われた才能に由来するものだった。穢れた血膿にまみれた直家の人生は、彼の謀略で死んでいった者たちの怨恨を思わせるが、作家はそれこそ墓場泥棒の細心さでもって撒き散らされた血膿を拭い取り、意外な真相を明らかにしていく。
 『宇喜多の捨て嫁』は表題作でオール讀物新人賞を受賞した作家が、さらに五篇を書き継いで上梓した連作短編集である。新人賞の応募原稿を書きあげたとき、作家の頭にどこまでの構想があったか詳らかではないが、おそらくは『告白』の湊かなえのように受賞してから新たに物語を膨らませたのではあるまいか。表題作で精細に構築した「梟雄」宇喜多直家のイメージを大胆にくつがえし、抱えた秘密の重さに苦しみ、呪われた運命に翻弄される孤独な男として再構築してみせた手腕はただごとではない。一読すれば、木下昌輝が時代小説の大看板となりうる才能だということがたちまち理解されよう。「公然の秘密」どころか、周知の事実である。



一族の秘密と、それを書き残すさだめのようなもの
【七五書店(愛知県)熊谷隆章】

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一族の秘密と、それを書き残すさだめのようなもの

 私が勤めている書店は名古屋市瑞穂区にあり、作家・大島真寿美さんの地元であるため、既刊をほぼ揃え、専用のコーナーを作って応援している。その関係で、今年一月に発表された第一五二回直木賞に大島さんが初ノミネートされたとき、大島さんとその作品について取材の話をいくつかいただいた。その備えとして大島さんのインタビュー記事をあらためていくつか読んだのだが、そこで印象的だったのが『ゼラニウムの庭』(ポプラ社)刊行時のものだった。

『ゼラニウムの庭』は、2012年9月刊。この年の4月に発表された「2012年本屋大賞」で『ピエタ』(ポプラ文庫)が第三位となり、大島さんは注目を集めた。『ゼラニウムの庭』は発表後はじめての単行本であり、『ピエタ』で新境地を開いた大島さんが、さらに深く一歩を踏みこんだともいえそうな、不思議な作品だった。
 物語の中心にいるのは双子の姉妹と、その孫である小説家。双子の姉の身体には「秘密」があり、奇妙な設定ではあるものの、これが物語を明治時代末期から100年以上にもわたる年代記的な厚みのあるものにしている。
 その「秘密」がファンタジーのようなものであることから、「物語に入りづらそう」と感じるひともいるだろう。しかし、読んでみると、そこまで現実離れしていない、どこかにありえるのかもしれない、という印象も受ける。そうして綴られていくものの背景に見えるテーマが、生きることや老いることについて、人生と時間の流れについてなど、多くのひとが一度は考えたことがあるのでは、というものだからだろうか。
 語り手は小説家だが、インタビューによると、それは元々意図していたものではなく、書きはじめたところで決まったものだという。冒頭から数ページは「書く理由」「記録する理由」で満たされ、これから語られることへの期待が高まる。子供のころから「何かを書く仕事」を志向し、自身が作家生活二十周年を迎えていた大島さんにとって、「書く」ということが大きなテーマになっていたことがうかがえる。

『ピエタ』から『あなたの本当の人生は』へと、大島さんが紡いできた「物語のうねり」の流れのなかに『ゼラニウムの庭』は欠くことのできない作品であり、いまあらためて読みかえしてみたい物語でもある。未読のかたは、ぜひ刊行順に読んで、大島さんの足取りを追いかけてみてほしい。



あれもこれも「秘密」の本 その三
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『放課後に死者は戻る』秋吉理香子 双葉社 9784575238839 ¥1,400+税

「入れ替えストーリーなんてありきたりでしょ」などとあなどるなかれ。ラストで明かされる秘密にあなたはきっと呆然とするはず。そして、もう一度読み返さずにはいられない。二度読み必至の青春ミステリー!
【蔦屋書店 イオンモール幕張新都心(千葉県)後藤美由紀】


『1985年の奇跡』五十嵐貴久 双葉文庫 9784575510768 ¥667+税

作者の仕掛けた秘密を堪能する類の本ではなく、秘密が 〝 暴かれた後 〟 のチームプレイがむちゃくちゃ最高! バカでヒマで無邪気で能天気。そんな高校生たちが仲間を思ってやってのけた、精一杯のバカ騒ぎ!
【丸善 津田沼店(千葉県)沢田史郎】


『マーチ博士の四人の息子』ブリジット・オベール/堀茂樹、藤本優子 訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 9784151708015 ¥840+税

約18年前に読んだ作品が復刊したという事でご紹介。舞台となる館のメイドと主の息子である殺人鬼の日記形式で語られる構成が面白い。ラストは意見が分かれるので読んだ人どうして語りたくなる作品なんですよね。
【堀江良文堂書店 松戸店(千葉県)髙坂浩一】


『雪の結晶』ケネス・リブレクト/矢野真千子 訳 河出書房新社 9784309253060 ¥1,600+税

「秘密」のお題で「日(=ひ)」が三つを探索。著者「日日日(あきら)」や版元「晶文社」など探すも空振り。ようやくタイトルで「晶」を見つけてひと安心。
冬は過ぎてしまったがサブタイトルの「秘」でお許しを。
偶然に出合った自然の秘密を堪能してください!
【三省堂書店 神保町本店(東京都)内田剛】



連載 店長・成川真の 〝 右往左往 〟
【ブックポート203(神奈川県)成川真】

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 先日、仕事で知り合ったおもしろい人がおりまして、相手もボクをおもしろい人だと思ったらしく、「今度飲みましょうよ」となりまして。で、ひと月後くらいに機会があったので、一緒に飲むことにしたのですけどね。せっかくなので、これまた変わり者の友人がいるので「連れていっていいですか?」と聞いたら、「是非!」っていってもらって。こうして、人と人の繋がりって増えていくのだなぁ、ってすごく実感した。そんなことがありました……。

 話は変わりますが、本屋さんに行くとよく目にする、本と一緒に飾ってある紙……そう、あらすじやお薦めコメントなどが書いてあるアレ、なんていうか知ってますか? POP――Point of purchase(advertising)――ポップっていいます。
 POPの中には出版社から送られてくる印刷されたものや、丁寧に書きこまれたりデコられたりした素敵なものや、もう完っ全に手描きだろこれ、っていうわかりやすいものもあって、時には店内の賑やかしに、時には選書のお供に役に立っているのではないかと思います。
 これは完全に個人の好みなのですが、ボクが好きなPOPは、字はうまくはないのだけれど、一生懸命に書いて、その本のおもしろさを伝えようとしているやつ。なんか目を引いちゃうっていうのもあります、達筆なものより字の下手なものの方が。
 てなわけで、自分が作る時も完全手描きです。勢いをこめたいがために筆ペンでよく書いています。
 とくに自分が読んで本当におもしろかった本のPOPには力が入ります。「ねえねえ! これ、ほんっっっとにおもしろかったから、読んでみて! 一生のお願い! 人生で108回目の一生のお願い!」っていう気持ちをこめてPOPを書きます。
 届け、お客さんに、この想い!
 ただね……。
 ミステリ、これを紹介する時がほんとに難しいんですよ。
 ミステリの醍醐味はやっぱりトリック。結末や犯人が自分の予想と外れていれば外れているほど、「やられた~!」「すげ~!」「アイラ~ビュ~、アイニ~ジュ~!」ってなるわけですよ。
 ところが、本を紹介するにあたって、このトリックには一切触れられない! だって、
「まさか、犯人がもっとも怪しくなかった冴えないアイツだったとは! 完全に読者の思い込みを利用した傑作トリック!」とか、
「これは斬新! 二重人格の視点を利用した引っかけトリック! 特に第二章の引っかけが秀逸なので一文字も見逃すな!」
 とか、こんなPOPがついてたら、誰も買わないでしょ……?
 てなわけで、トリックについては基本的に秘密にして、あらすじや舞台設定、登場人物で推すんだけれど、それだけだとどうしても弱い。
 その結果どういうことになるか。
 そうです、「衝撃のラスト」っていうどこかで、というか、どこでも見かけるあのデフォルトの文字が店内各所で踊るわけです。
「おいおい、またかよ、最近の本は衝撃だらけじゃねぇか」とお思いの皆さん。それは決して安直に書いたわけじゃなくて、驚きをなるべく鮮度を落とさず、読者のみなさんへとお届けしたいという気持ちで、さらに悩みに悩んだ結果として、ひねりだされたコメントが た ま た ま 似通ったそれであったのだ、ということなのです。
 納得いきましたでしょうか。

 …………冒頭で紹介したお話しですが続きがありまして。紹介した二人、出会って顔を見合わせて「あっ!」。なんと同じ大学出身でしかも当時同じサークルだったということで、完全な知り合いだったのです。世間は狭いというか、なんというか……てか、二人だけで大学時代の話で盛り上がってんじゃないっ! ついてけないだろがっ! その前に「こうして人と人の繋がりってうんぬん」って、オレの抱いた純粋な思いを返せっ!

 どうです? この衝撃のラスト?



掲載作品一覧
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by haredoku | 2015-04-01 17:18 | 『はれどく vol.9』 | Comments(0)