全国の書店員による、おすすめ本のフリーペーパー「晴読雨読」通称"はれどく"の公式ブログです。


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カテゴリ:『はれどく vol.4』( 4 )

『はれどく』4号 その1 「あったまる」本

『はれどく』4号!



表紙
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目次
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本文はこちら!
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by haredoku | 2014-01-09 18:13 | 『はれどく vol.4』 | Comments(0)

『はれどく』4号 その2 「あったまる」番外編 恋愛小説五番勝負

「あったまる」番外編 恋愛小説五番勝負①
【丸善丸の内本店(東京都)/田中大輔】
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 33歳、独身、DT。といっても、DTはイニシャルである。なにか勝手に勘違いしてはいないか? 恋愛経験はそれなりにあるほうだ。結婚はしていないけれど、一度は婚約もしたことがある。まぁ、独身ということから察してくれっていう感じだけど、事実は小説よりも奇なりといったことも色々経験している。そんな私に、同い年の女性書店員から、恋愛小説の紹介対決を申し込まれた。これは負ける訳にはいかない。ということでこれからオススメの恋愛小説を五冊紹介しよう。
 まずはロマンチックエンジンが全開になる、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』(角川文庫)だ。黒髪の乙女に恋する先輩は、一歩を踏み出す勇気がなくて、外堀を埋め続けている。「たまたま通りかかったものだから……」といいながら、京都の色んな所で黒髪の乙女と「偶然の」出会いを演出する。ちょっとストーカーちっくだけど、好きな人の目に留まるように行動するっていうのは、誰もが一度はやってることなんじゃないかな? そんな先輩の行動の数々に胸がキューンとなることまちがいなし! 先輩の活躍をとくとご覧あれ!
 続けて男女別の胸キュン小説を二つ紹介しよう。まずは男性向けから。越谷オサムの『陽だまりの彼女』(新潮文庫)だ。ヒロインの真緒がとにかく魅力的! ネタバレになっちゃうから、真緒の特徴は説明できないんだけど、彼女の◯っぽいところに、恋に落ちる読者はたくさんいるはずだ。中学生のときに淡い思いを抱いていた女の子と、大人になって偶然の再開。しかもその子がめちゃくちゃ素敵な女性になっていたら、それはもう恋に落ちたって仕方がないよね。そこから始まる二人の関係がとても理想的。こんなふうに恋人とデートしてみたいってそんな気持ちにさせられる小説だ。
 次は女性向け。瀧羽麻子の『左京区恋月橋渡ル』(小学館)。この本は、もう最強! 読んでるだけで、なんでこんなに胸が苦しくなるんだろう? 恋愛に疎い理系男子の山根くんの行動に、胸がキュンキュンしっぱなし。きっとあなたも山根くんの虜になるはず。恋ってほんとにいいものだよねって思える素敵な小説だ。「出会わなければよかったなんてことは決してないのです」。恋愛に臆病になっている人は、これを読んで勇気をもらうといい。
 遠距離恋愛をしている人にオススメなのが、『I love you』(祥伝社)に出てくる伊坂幸太郎の「透明ポーラーベア」だ。これは伊坂作品の中で私が一番好きな作品でもある。「愛するとは、お互いに見つめ合うのではなくて、同じ方向を見つめることである」。というサン=テグジュペリの言葉が核となって物語は収束していく。この物語のたたみ方が本当に素晴らしい。大丈夫、きっとあなたたちはつながっているから。遠距離恋愛の不安を吹き飛ばしてくれる素敵な小説だ。
 最後は『I love you』に収録されていた「突き抜けろ!」という作品をもとに書かれた中村航の『絶対、最強の恋のうた』(小学館文庫)。恋愛が始まるときの幸せな気持ちがいっぱいあふれていて、読んでいるだけで、こっちまで幸せな気分になってくる。物語に出てくる幸せのスパイラルが、この本を読むことにより生み出される。これって素敵なことよね。
LOVE ACTUALLY IS ALL AROUND! 恋はあなたの周りに転がっている。恋愛小説を読んで、もっと素敵な恋をしよう!


「あったまる」番外編 恋愛小説五番勝負②
【紀伊國屋書店富山店(富山県)/野坂美帆】
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「少女の恋は詩なり。年増の恋は哲学なり」。私、今年33歳になる書店員。年増って言葉の定義が気にかかるが、絶対に少女という年齢ではない。どうしようかと長谷川如是閑を読む……じゃなくて、今回のお題は恋愛。年増がオススメする恋愛小説五冊、哲学なんてないけど気に入っていただければ幸い。あ、諸先輩方、33歳で年増って言葉を受け入れちゃダメって?

 大人にならないと感覚的に理解できない小説というものがあると思う。恋愛、結婚、出産、離婚を経験した今だからこそ、胸におちるのが井上荒野。『誰よりも美しい妻』(新潮文庫)は、一人の女が一人の男を愛する静かな戦いの記録だ。「そもそも身勝手な確信がなくて、人は人を愛せるだろうか」と主人公は言う。この主人公が示した愛の形は作者からの問いである。答えはきっと誰もが胸に秘めておきたくなるのだろうけど。
 ミステリ小説の傑作ながら、抒情性を兼ね備えた恋愛小説となっているものがある。連城三紀彦『戻り川心中』(光文社文庫)は花をテーマにした連作短編だ。美しい文体が紡ぐのは残酷で生々しい人間の業だが、明治期から昭和初期に設定された時代のせいか、どこか幻影を見ているかのような儚さ。解説・千街晶之の名文が名高いので引用する。「人生のすべてを賭けて咲かせた幻の花。たとえ罪深く彩られていようとも、その値打ちが重くない筈があろうか」。たとえ罪にまみれていようとも、その愛は純粋で、深く胸を打つ。だからこそ、やはり罪深いのだ。
 青春のきらめきの中で放たれる、真っ直ぐな思いに目を細めるのもよい。読めば胸を焦がし、過去においてきてしまった切なさを懐かしくよみがえらせてくれる、そんな小説だ。橋本紡『葉桜』(集英社)は書道教室の先生に思いを寄せる女子高生が主人公。真摯でひたむきな恋。告白の瞬間に向かって凝縮されていく主人公の思い。緊張感に息が詰まる。いい恋愛を見た。そう思える読後感。
 その人に近付きたい、そう思い始める瞬間は、鮮やかなのに妙にさり気なくやってくる。セックスしたいとか、結婚したいとか、そんな感情ではない。ただ、この人に近付きたいと思う気持ち。その最初の気持ちから、世界で唯一無二の恋が与えた感情の揺れのディテールすべてを丹念に描いているのは川上三映子『すべて真夜中の恋人たち』(講談社)。恋に落ちる根源の気持ちは何なのだろう。恋とは何かを問いかける作品に、大人であればこそきっと答えられない。
 辛く悲しい別れを負ったばかりの人は、小手鞠るい『別れのあと』(新潮文庫)を読むといい。どうしても出てこなかった涙を流せばいい。別れは確かに何もかもを奪っていく。地面にめり込んでしまった足を動かせなくなるような日々の只中にある人は、誰にも何も言われたくないだろうし、誰にも何も言いたくないだろう。作中語られる別れを経た女たちの静かな言葉が、いつかあなたの心に沁みこむだろうと信じる。

「恋の悲しみを知らぬものに恋の味は話せない」と伊藤佐千夫は言ったけれど、恋愛の酸いも甘いも知ることが本当に幸せなのだろうか。ちょっぴり苦笑いで筆を置く。皆さん、これからもよい恋を!
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by haredoku | 2014-01-09 17:13 | 『はれどく vol.4』 | Comments(0)

『はれどく』4号 その3 まだまだあるぞ! 「あったまる」本

まだまだあるぞ! 「あったまる」本
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『和菓子のアン』坂木司(光文社文庫)
デパ地下の和菓子屋「みつ屋」で起こるミステリー。そこで働く通称「アンちゃん」のほのぼのとした可愛さに心があったかくなります。そして、読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる1冊。
【TSUTAYA高槻店(大阪府)/石橋俊幸】

『桐谷さんの株主優待ライフ』桐谷広人(小学館)
トンデモ本かと思いきや意外と使える情報も。消費増税その前に、トクする工夫が大事です。しっかり読むほど、きっとお金が「あっ貯まる!」。疾走する笑いがあなたの懐と心を同時に温めます。
【三省堂書店営業本部(東京都)/内田剛】

『すみっこの空さん』たなかのか(マッグガーデン)
片田舎で暮らす小1の少女、空さん。空さんの目を通して見ると何気ない日常もふんわりとやわらかな世界に感じられます。終始ほっこりさせてくれる空さんはあなたの心を優しくあたためてれます!
【TSUTAYA津田沼店(千葉県)/後藤美由紀】

あった!〇 『りんごかもしれない』ヨシタケシンスケ(ブロンズ新社)
テーブルの上に赤いまるいものがある。ん? なんだろう。実はこれはりんごです。いや、ちがうかも? そう見えるだけかも?
【書店員・ころころむし】

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『わたしをみつけて』中脇初枝(ポプラ社)
ヒトに傷つけられても、その傷を癒すのは人であって欲しい。そういう世の中であって欲しい。弥生が希望へ向かって歩みだすその瞬間にどうぞ立ち会って、見届けてあげてください。
【成田本店みなと高台店(青森県)櫻井美怜】

『セント・メリーのリボン』稲見一良(光文社文庫)
「男の贈り物」をテーマに編まれた、強くてやさしい男たちの物語。冬の夜の焚火のような、或いは、無骨な父親の手のひらのような、そんな温もりに満ちた「はーと♡ボイルド」。
【丸善津田沼店(千葉県)/沢田史郎】

『それからはスープのことばかり考えて暮らした』吉田篤弘(中公文庫)
味や素材も違うのに誰の記憶にも結びつく懐かしい飲み物、スープ。作る人はひたすら誰かを笑顔にするために、美味しくなるように念じて作る。飲んだら皆が温かい気持ちになるのだ。それはこの話もおんなじ。
【TSUTAYA枚方駅前本店(大阪府)/鈴木正太郎】

『火を熾す』ジャック・ロンドン/柴田元幸 訳(スイッチ・パブリッシング)
吐き出した唾が空中でぱちんと弾ける。極寒の地アラスカを一人の男が歩く。生存への意思と、己の慢心。命を繋ぐ火を熾す描写の緊迫感が凄まじい。表題作ほかJ・ロンドンの傑作短篇集。
【進駸堂中久喜本店(栃木県)/鈴木毅】

『さがしもの』角田光代(新潮文庫)
本は想い出とともに。個人的な本にまつわるストーリーが詰まってます。読後、本当によかった! と何回もつぶやきました。「本」が好きなあなたは絶対に心がじんわりあたたまる事間違いなし。
【TSUTAYA 寝屋川駅前店(大阪府)/中村真理子】

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『ノラや』内田百閒(中公文庫)
ある日、百閒先生の家に野良の子猫が迷い込む。「ノラや」という呼びかけに反応するようになった猫との短くも幸せな日々。百閒のまるでわが子を思うような溺愛ぶりに、ほんわりした気持ちになる一冊。
【啓文堂書店三鷹店(東京都)/西ヶ谷由佳】

『ちちこぐさ』田川ミ(マッグガーデン)
愛する妻を亡くし、一度手放した幼い息子を連れ、薬の行商の旅に出たトラ吉。不器用な父トラ吉と、彼を慕う息子シロウが旅先で見つける小さくて大きな幸せに、心がじんわり暖まる。
【黒木書店井尻店(福岡県)/原田みわ】

『パタリロ!』魔夜峰央(白泉社花とゆめコミックス)
夏は冬に憧れて冬は夏に帰りたい……てな歌もありましたが。暑さ寒さに弱い私は常春の国マリネラ国に住むのが夢なのだ。一年中温かいマリネラ国でパタリロ殿下と共にクックロビン音頭を踊り続けるのだ。
【精文館書店中島新町店(愛知県)/久田かおり】

『高橋聖一のよいこのSF劇場』高橋聖一(小学館)
誰かが誰かを救うことで世界は成り立っているんだよ、今だって世界の危機をあの人は救おうとしている。僕にその役が回ってきたら全力でいくよ! え? 君に大事な人や世界を救う力なんて「あった」?「まる」ごと全部救ってやるさ!
【書店員・bibduck】

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『ウォームハートコールドボディ』大沢在昌(角川文庫)
大沢在昌が『新宿鮫』ブームの陰に隠れて発表したライトSFハードボイルド。特殊な新薬によって、死んだのにゾンビ状態で生かされた男が大活躍。身体は冷たいが、心は温かい。そして読者も暖かな余韻に包まれる。
【啓文社コア福山西店(広島県)/三島政幸】

『うどんの国の金色毛鞠』篠丸のどか(バンチコミックス)
家族や故郷に反発する気持ち、誰もがきっと一度は感じますよね。継げなかった店を処分するために戻った、誰もいない実家はずので見つけたものは!? 心あったまるモフモフ系ふるさとコミックです。
【七五書店(愛知県)/森晴子】

『四十九日のレシピ』伊吹有喜(ポプラ文庫)
祝*映画化も兼ねて。「おっか」さんとお母さん、2人の自己主張しないでっかい愛にお腹の底からじんわりあったまります。
【サクラ書店平塚ラスカ店(神奈川県)/栁下博幸】

『峠うどん物語』重松清(講談社)
葬儀場の前にある『峠うどん』。やって来るのは淋しさと一抹の後悔を秘めた人達。冷えた身体と気持ちをあっためてください。湯気の向こうに彼の人の笑顔が見えるかもしれませんよ。
【紀伊國屋書店名古屋空港店(愛知県)/山崎蓮代】
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by haredoku | 2014-01-09 16:13 | 『はれどく vol.4』 | Comments(0)

『はれどく』4号 その4 毎度お馴染み連載三羽烏

連載第二回 店長・Hの漫画三昧
【三省堂書店新横浜店(神奈川県)/比嘉栄】
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 Twitter座談会なるものを不定期で開催しておりまして。どんなものか簡単に説明すると、①お題となる漫画を一作品選んで ②決めた日時にTwitter上で語り合う、てな感じ。こう書くと簡単ですが、実情は結構大変なもんです。真夜中にTL上で大騒ぎ。進行のタイムスケジュールを見つつ話の流れを把握しつつツッコミ入れたりぼけてみたり真面目にまとめたり。それでも、自分が大好きな作品を自分と同じくらいまたはそれ以上に大好きな人たちと一緒に語りあうのってなんであんなに楽しいんだろう? と思うので、止められません。

 初めて開催したのは2011年2月、漆原友紀『水域』(講談社)でした。『蟲師』(講談社)よりも現実的で、それでいて幻想的な世界観。ダムの底に沈んだ村、そこに住んでいた祖母と母。日照り続きのある夏休み。少雨でダムの底からあの村が姿を現した日から、少女・千波は不思議な夢を見る。過去と現在、祖母と母の昔語りが重なりながら、三世代の少女たちと故郷、そして家族の記憶が結び付く。読了後、もう本っ当に放心状態で。我に返った後に誰彼かまわず絶賛しまくり、勢いで『水域』を読んだ方たちにtwitter上で声をかけて意気投合。土曜深夜に語り合うという今のスタイルが始まったのでした。調べたら、発売からわずか二週間後に開催。熱すぎだろうみんな。
 その後、2013年4月の松田奈緒子『重版出来!』(小学館)まで合計八作品を扱ってきました。それぞれにいろんな想い出がありますが、特に「あ、これはヤバい」と思ったのが第三回の日本橋ヨヲコ『G戦場ヘヴンズドア』(小学館)。なにがヤバかったって、参加者がとても多くて最初の自己紹介だけで30分が経過したという・・・(笑)。会話の脱線具合も半端なく(芋けんぴ騒動)、本当に深く深く愛されている作品だったなぁと改めて感じました。ちなみに、終わったのが深夜3時。
 取り上げる作品は「完結しているもの」という自己ルールを放棄してまで取り上げたのは第六回のアルコ×河原和音『俺物語!』(集英社)。理由はただひとつ。最高に面白かったから。発売と同時にTwitter上での盛り上がり方も尋常ではなく、勢いで発売3週間後に開催。たった一冊であんなにも盛り上がれるものか! と思うくらいに座談会も盛り上がりました。少女漫画の枠をぶっ壊した素晴らしい作品。現在4巻まで発売中。

『G戦場ヘヴンズドア』座談会開始直前。日本橋ヨヲコ先生が書きこんで下さった「タイムマシンに乗って、十年前この作品が駄目だったら漫画家辞めようと思っていた自分にTLを見せてやりたいです」という呟きが、あの場にいた皆の心を奮い立たせました。「この作品が好きだ」という気持ちをあなたの中だけにしまうのではなく、拙くても言葉にして届けること。それがきっと間違いなく、あなたの大好きな作品を作ってくれた作者への、かけがえのない恩返しだと僕は思うのです。
 座談会は今後も続けます。もしも見かけたら、そして自分が大好きな作品だった時には。あなたの参加をお待ちしております。


連載第三回 有楽町の食いしん坊・新井見枝香の〝読んでから食う? 食ってから読む?〟
【三省堂書店有楽町店(東京都)/新井見枝香】
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ある昼下がり、三省堂書店有楽町店の事務所に、社員一同が集まった。全員、一冊の新書を手に持っている。
『売る力 心をつかむ仕事術』(文春新書)
著者はセブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOである鈴木敏文氏。同じ小売業として、大変勉強になる内容であったとともに、脅威を感じた我々は、急遽会議を開くことにした。
本日の議題は【「セブン-イレブン」に負けないために】
「セブン-イレブンはずっと業界ナンバーワンだね」「うちも業界ナンバーワンになりたいなぁ」「焼きたて直送便のパンが美味過ぎるんだよ」「あの質は、他チェーンとは比べもんにならんな」「安全と焼きたてにこだわって、専用工場を自ら作っちゃったんだもんね」「うちだって刷りたて直送便ならできるぞ」「エスプレッソブックマシーンか」「それいいねぇ、刷りたて熱熱オンデマンド本」「寒い日には嬉しい」「寒い日といえば、セブンカフェいいよね」「私、今までドトールだったから、だいぶ安上がり」「そのぶん[ミルクたっぷりとろりんシュー]が追加されているため、お値段据え置きカロリー増かと思われますが」「プライベートブランド商品もこだわりを感じるよね」「三省堂のPB商品? 辞書かな」「厳密に言うと違う」「あ、そういえばお前、さっきセブン-イレブンで『週刊文春』買ってなかったか?」「出たっ、裏切り者」「nanacoポイントがいっぱい貯まる日だったんですよ」「nanaco持ってる時点でお前は完敗だよ!」「書店員は潔く図書カードだけ使え!」「図書カードでお好み焼きパンは買えないです」「あぁーっ、あれ具沢山で美味しいよね!」「具の量はたっぷりコーンマヨネーズも負けてないぞ」「バタースコーッチ! カムバーック!」「俺のクイニーアマンちゃん!」「コッペパン最強!」「あぁっ、もう会議は終了だ! みんなでセブン-イレブンいい気分だ! 行くぞっ!」・・・三省堂書店有楽町店、今のところ、セブンイレブンに完敗。


とうとう連載第四回! 店長・成川真の〝右往左往〟
【ブックポート203大和店(神奈川県)/成川真】
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 4世紀から5世紀にかけて、フン族におされてゲルマン人の一派であるゴート族が南下し、ローマ帝国領をおびやかしはじめた。この後も多数のゲルマニア民族が続き、ローマ帝国に侵入していった。世にいうゲルマン民族の大移動である。
 また、中国では毎年旧正月の時期になると、故郷で過ごすために32億人もの人間が大陸を縦横無尽に移動し、大混乱を起こすという。
 このように、時期や要因は様々であるが、人類は数多の移動を有志以来繰り返してきたという過去を持つ。もはやこれは、人類のDNAに刻まれた一種の本能であるといっても過言ではないのか? 機会があったら解明してみたい。
 さて、これと同じような現象が書店でも起きる事を知っておられるだろうか?
各店の店長が一斉に違う店に変わる時期を、「書店界の大異動」というとかいわないとか。聞いたことない? でしょうね、今考えました。
 あ! 痛い! 物を投げないでください! 石はやめて! 柔らかいのにして!

……………………さて。
 書店業界に身を投じて、早十数年。ボクもいくつもの店舗を渡り歩いてきました。そしてまた新たなる店へ……。
 といっても、今回は今いる店舗との兼任です。二店舗同時に見るという、まさしくニュータイプにしかできない芸当です。「ボクが一番うまくこの店の売上をとれるんだ……」といいながら、爪を噛んでみました。
 ニ店舗のマネジメントをして、二店舗の仕入れをして、二店舗の売上を担って、給料は二倍……じゃなくてそのままでした。世の中、そう甘くはない。
 てなわけで、まず最初は新しい店の方に重点を置くべく、そちら中心の生活になったわけですが……。
 とりあえず、それまでいた店に行く回数が極端に減るわけで、女性スタッフの一人にこんな連絡を頼みました。
 「来週いっぱいで、その後はなかなかこちらに来られなくなるから、女性スタッフみんなに伝えておいてくれたまえ。『店長に愛の告白をするならそれまでだぞ』って」
 「……………………はい、わかりました」
 しばし時間が止まったかのような無言の空気が気になりましたが、やってくれるようです。
 さて一週間、一向に動きがないのでおかしいと思い、数人の女性スタッフに連絡が行き届いているか確認してみました。すると、皆から一様に同じ返事が返ってきました。
 「時間が短すぎるので告白する決心がつきません。もう少し時間があればよかったんですけどね」
 「すみません、時間が短すぎますよ、せめてあと一週間」
 「ええ時間が(以下略)」
 あ、そう……そうですか。
 それじゃしかたないよねっ!
無理やり元気を出そうとしたところ、一人から声をかけられました。
「ところで店長、今度の月曜日あいてますか? みんなで送別会を開こうと思うのですが」
「え? ほんと? ありがとう、それじゃ月曜日はあけておくよ…………って、ちょっと待てィ! ここの店長やめるわけじゃないからっ! なに追い出そうとしてんのっ!」
「いやいや、追い出すなんて人聞き悪い。そんなつもりはまったくありませんよ。それでは月曜日にしますね、送 別 会」
 「ぜ、絶対に追い出されないからね! 追い出すなんて許さないから! いや、ほんと……追い出さないで……ごめん、オレがわるかったから……もう……告白とかいわないから……」
 とりあえず、最後は涙目になりながらすがっておきました。


掲載作品リスト
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by haredoku | 2014-01-09 15:13 | 『はれどく vol.4』 | Comments(0)