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全国の書店員による、おすすめ本のフリーペーパー「晴読雨読」通称"はれどく"の公式ブログです。


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『はれどく』4号 その4 毎度お馴染み連載三羽烏

連載第二回 店長・Hの漫画三昧
【三省堂書店新横浜店(神奈川県)/比嘉栄】
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 Twitter座談会なるものを不定期で開催しておりまして。どんなものか簡単に説明すると、①お題となる漫画を一作品選んで ②決めた日時にTwitter上で語り合う、てな感じ。こう書くと簡単ですが、実情は結構大変なもんです。真夜中にTL上で大騒ぎ。進行のタイムスケジュールを見つつ話の流れを把握しつつツッコミ入れたりぼけてみたり真面目にまとめたり。それでも、自分が大好きな作品を自分と同じくらいまたはそれ以上に大好きな人たちと一緒に語りあうのってなんであんなに楽しいんだろう? と思うので、止められません。

 初めて開催したのは2011年2月、漆原友紀『水域』(講談社)でした。『蟲師』(講談社)よりも現実的で、それでいて幻想的な世界観。ダムの底に沈んだ村、そこに住んでいた祖母と母。日照り続きのある夏休み。少雨でダムの底からあの村が姿を現した日から、少女・千波は不思議な夢を見る。過去と現在、祖母と母の昔語りが重なりながら、三世代の少女たちと故郷、そして家族の記憶が結び付く。読了後、もう本っ当に放心状態で。我に返った後に誰彼かまわず絶賛しまくり、勢いで『水域』を読んだ方たちにtwitter上で声をかけて意気投合。土曜深夜に語り合うという今のスタイルが始まったのでした。調べたら、発売からわずか二週間後に開催。熱すぎだろうみんな。
 その後、2013年4月の松田奈緒子『重版出来!』(小学館)まで合計八作品を扱ってきました。それぞれにいろんな想い出がありますが、特に「あ、これはヤバい」と思ったのが第三回の日本橋ヨヲコ『G戦場ヘヴンズドア』(小学館)。なにがヤバかったって、参加者がとても多くて最初の自己紹介だけで30分が経過したという・・・(笑)。会話の脱線具合も半端なく(芋けんぴ騒動)、本当に深く深く愛されている作品だったなぁと改めて感じました。ちなみに、終わったのが深夜3時。
 取り上げる作品は「完結しているもの」という自己ルールを放棄してまで取り上げたのは第六回のアルコ×河原和音『俺物語!』(集英社)。理由はただひとつ。最高に面白かったから。発売と同時にTwitter上での盛り上がり方も尋常ではなく、勢いで発売3週間後に開催。たった一冊であんなにも盛り上がれるものか! と思うくらいに座談会も盛り上がりました。少女漫画の枠をぶっ壊した素晴らしい作品。現在4巻まで発売中。

『G戦場ヘヴンズドア』座談会開始直前。日本橋ヨヲコ先生が書きこんで下さった「タイムマシンに乗って、十年前この作品が駄目だったら漫画家辞めようと思っていた自分にTLを見せてやりたいです」という呟きが、あの場にいた皆の心を奮い立たせました。「この作品が好きだ」という気持ちをあなたの中だけにしまうのではなく、拙くても言葉にして届けること。それがきっと間違いなく、あなたの大好きな作品を作ってくれた作者への、かけがえのない恩返しだと僕は思うのです。
 座談会は今後も続けます。もしも見かけたら、そして自分が大好きな作品だった時には。あなたの参加をお待ちしております。


連載第三回 有楽町の食いしん坊・新井見枝香の〝読んでから食う? 食ってから読む?〟
【三省堂書店有楽町店(東京都)/新井見枝香】
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ある昼下がり、三省堂書店有楽町店の事務所に、社員一同が集まった。全員、一冊の新書を手に持っている。
『売る力 心をつかむ仕事術』(文春新書)
著者はセブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOである鈴木敏文氏。同じ小売業として、大変勉強になる内容であったとともに、脅威を感じた我々は、急遽会議を開くことにした。
本日の議題は【「セブン-イレブン」に負けないために】
「セブン-イレブンはずっと業界ナンバーワンだね」「うちも業界ナンバーワンになりたいなぁ」「焼きたて直送便のパンが美味過ぎるんだよ」「あの質は、他チェーンとは比べもんにならんな」「安全と焼きたてにこだわって、専用工場を自ら作っちゃったんだもんね」「うちだって刷りたて直送便ならできるぞ」「エスプレッソブックマシーンか」「それいいねぇ、刷りたて熱熱オンデマンド本」「寒い日には嬉しい」「寒い日といえば、セブンカフェいいよね」「私、今までドトールだったから、だいぶ安上がり」「そのぶん[ミルクたっぷりとろりんシュー]が追加されているため、お値段据え置きカロリー増かと思われますが」「プライベートブランド商品もこだわりを感じるよね」「三省堂のPB商品? 辞書かな」「厳密に言うと違う」「あ、そういえばお前、さっきセブン-イレブンで『週刊文春』買ってなかったか?」「出たっ、裏切り者」「nanacoポイントがいっぱい貯まる日だったんですよ」「nanaco持ってる時点でお前は完敗だよ!」「書店員は潔く図書カードだけ使え!」「図書カードでお好み焼きパンは買えないです」「あぁーっ、あれ具沢山で美味しいよね!」「具の量はたっぷりコーンマヨネーズも負けてないぞ」「バタースコーッチ! カムバーック!」「俺のクイニーアマンちゃん!」「コッペパン最強!」「あぁっ、もう会議は終了だ! みんなでセブン-イレブンいい気分だ! 行くぞっ!」・・・三省堂書店有楽町店、今のところ、セブンイレブンに完敗。


とうとう連載第四回! 店長・成川真の〝右往左往〟
【ブックポート203大和店(神奈川県)/成川真】
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 4世紀から5世紀にかけて、フン族におされてゲルマン人の一派であるゴート族が南下し、ローマ帝国領をおびやかしはじめた。この後も多数のゲルマニア民族が続き、ローマ帝国に侵入していった。世にいうゲルマン民族の大移動である。
 また、中国では毎年旧正月の時期になると、故郷で過ごすために32億人もの人間が大陸を縦横無尽に移動し、大混乱を起こすという。
 このように、時期や要因は様々であるが、人類は数多の移動を有志以来繰り返してきたという過去を持つ。もはやこれは、人類のDNAに刻まれた一種の本能であるといっても過言ではないのか? 機会があったら解明してみたい。
 さて、これと同じような現象が書店でも起きる事を知っておられるだろうか?
各店の店長が一斉に違う店に変わる時期を、「書店界の大異動」というとかいわないとか。聞いたことない? でしょうね、今考えました。
 あ! 痛い! 物を投げないでください! 石はやめて! 柔らかいのにして!

……………………さて。
 書店業界に身を投じて、早十数年。ボクもいくつもの店舗を渡り歩いてきました。そしてまた新たなる店へ……。
 といっても、今回は今いる店舗との兼任です。二店舗同時に見るという、まさしくニュータイプにしかできない芸当です。「ボクが一番うまくこの店の売上をとれるんだ……」といいながら、爪を噛んでみました。
 ニ店舗のマネジメントをして、二店舗の仕入れをして、二店舗の売上を担って、給料は二倍……じゃなくてそのままでした。世の中、そう甘くはない。
 てなわけで、まず最初は新しい店の方に重点を置くべく、そちら中心の生活になったわけですが……。
 とりあえず、それまでいた店に行く回数が極端に減るわけで、女性スタッフの一人にこんな連絡を頼みました。
 「来週いっぱいで、その後はなかなかこちらに来られなくなるから、女性スタッフみんなに伝えておいてくれたまえ。『店長に愛の告白をするならそれまでだぞ』って」
 「……………………はい、わかりました」
 しばし時間が止まったかのような無言の空気が気になりましたが、やってくれるようです。
 さて一週間、一向に動きがないのでおかしいと思い、数人の女性スタッフに連絡が行き届いているか確認してみました。すると、皆から一様に同じ返事が返ってきました。
 「時間が短すぎるので告白する決心がつきません。もう少し時間があればよかったんですけどね」
 「すみません、時間が短すぎますよ、せめてあと一週間」
 「ええ時間が(以下略)」
 あ、そう……そうですか。
 それじゃしかたないよねっ!
無理やり元気を出そうとしたところ、一人から声をかけられました。
「ところで店長、今度の月曜日あいてますか? みんなで送別会を開こうと思うのですが」
「え? ほんと? ありがとう、それじゃ月曜日はあけておくよ…………って、ちょっと待てィ! ここの店長やめるわけじゃないからっ! なに追い出そうとしてんのっ!」
「いやいや、追い出すなんて人聞き悪い。そんなつもりはまったくありませんよ。それでは月曜日にしますね、送 別 会」
 「ぜ、絶対に追い出されないからね! 追い出すなんて許さないから! いや、ほんと……追い出さないで……ごめん、オレがわるかったから……もう……告白とかいわないから……」
 とりあえず、最後は涙目になりながらすがっておきました。


掲載作品リスト
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by haredoku | 2014-01-09 15:13 | 『はれどく vol.4』